-改良型バチスタ手術の「左心室縮小形成術」と「中隔前壁心室除外術」(SAVE手術)-


高血圧の原因

拡張型心筋症

拡張型心筋症は原因不明で、重症だと心臓移植以外では助からないとされています。四つある心臓の部屋のうち、全身に血液を送る左心室が、心筋の働きが弱った分、ポンプ機能を維持しようと膨らみます。

1990年代初めに始まった治療が、拡張した左心室の心筋の一部を切り取る「バチスタ手術」です。ブラジルのR・バチスタ医師が考案しました。左心室の容積を減らすことで心臓の収縮力を増し、ポンプ機能を回復させます。

日本では1996年に初めて行われ、1998年に保険適用されました。しかし、手術の成績が思わしくなく、件数は伸び悩みました。


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改良型バチスタ手術の「左心室縮小形成術」

バチスタ手術では、左心室の背中側の心筋を画一的に切除します。しかし、肥大した心筋は一様に悪くなるのではなく、重症の患者でも十分な機能を持つ部分が残っていることがわかってきました。

そこで考えられたのが、大きく広がって働きの鈍った心臓の左心室を、心筋を切除せずに小さくする改良型バチスタ手術「左心室縮小形成術」です。

心臓血管研究所付属病院心臓外科で指導する医師、須磨久善さんは、国内で初めてこの手術を実施した第一人者です。手術中に、超音波装置で、心筋の障害のある部分と、機能を維持した部分を見分け、可能な限り良い部分を残す改良型のバチスタ手術を考案しました。

「中隔前壁心室除外術」(SAVE)

心筋のうち、左右の心室を仕切る心室中隔の付近が悪くなった場合、中隔は切除できません。そこで須磨さんは、特殊な合成繊維でできた布(パッチ)で間仕切りを作って心室の空間を狭め、中隔を切除せずに左心室を3分の2程度に縮小させる「中隔前壁心室除外術」別名「SAVE(セイブ)手術」も開発しました。

パッチの間仕切りと中隔の間には血液が入り込み、自然にふさがれます。この手術も保険が適用されます。

傷んだ心筋の部位により、改良型バチスタ手術とSAVE手術の2通りの左心室縮小形成術を使い分ける手法で、治療成績は向上しました。

須磨さんが院長だった葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)などで実施した96例の場合、左心室の裏側を一様に切除した従来のバチスタでは、手術による死亡率は42・8%。一方、心筋の具合を見て、改良型バチスタとSAVEを選択した場合の死亡率は14・6%と、約3分の1に減りました。

須磨さんは「良い心筋を残すことで、切除する部分を小さくできます。内科的治療を組み合わせ、長期の生存率の改善も期待しています」と語っています。

「両心室ぺーシング」

同研究所付属病院の内科的治療は、左心室形成術の後、新しいペースメーカー「両心室ぺーシング」の機器を埋め込みます。通常のペースメーカーは右心室に電気刺激を与えますが、両心室ぺーシングは左右の心室をほぼ同時に刺激し、スムーズに収縮させます。

心室形成術を受けるには、

〈1〉薬による治療で心不全が改善しない。

〈2〉左心室の内径が8センチ以上に拡張している。

〈3〉左心房と左心室の間の僧帽弁に逆流がある。

などが条件になります。

心臓移植が普及しない日本では、「左心室縮小形成術」は拡張型心筋症などで悩む患者の頼みの綱になります。その生活の質向上には、手術の成否と同じくらい、手術後の管理も重要となります。今後、両心室ペースメーカーの装着など内科的療法が増加すると見られています。


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関係医療機関 

心臓血管研究所付属病院

葉山ハートセンター

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