-心不全の除細動器付きペースメーカー-


心不全の除細動器付きペースメーカー

慢性心不全の「心室細動」

重度の慢性心不全の40歳男性は、心臓の拍動が左右ばらばらで、食事をしても息が切れ、心臓が血液を全身に送れなくなる不整脈「心室細動」を起こしたこともありました。東京女子医大病院で2006年4月、心室細動が起きた時に電気ショックを与える除細動器付きのペースメーカーを体内に植え込みました。

ペースメーカーのおかげで拍動が整い、休まずに階段を上れるようになりました。植え込んだ翌年、2回の心室細動を起こしましたが、異常を感知すると自動で電気ショックが発生して震えを止め、まもなく拍動も正常に戻りました。

心臓は、内部で電気信号が発生し、これが心筋に伝わって規則正しく収縮、血液を全身に送り出す。40歳男性は信号の伝達に障害があって、収縮が左右ばらばらでした。このため、心臓の機能が低下して全身に十分な血液が送れなくなる心不全になっていました。

通常のペースメーカーは、脈が遅いなどの不整脈の患者に使われる装置で、心臓の右心室に電気信号を送り出すことで、拍動のリズムを整えます。心臓の収縮が左右ばらばらな患者向けに、左右の心室に電気信号を送ることができる両心室ペースメーカーが2000年前後に欧米で登場しました。国内では04年4月に保険適用されました。

しかし、心不全の患者は心室細動を起こしやすく、慢性心不全の死因の4割を占めています。このため、症状によってはペースメーカーとは別に、心室細動に対応できるよう「除細動器」を体内に植え込むケースもあります。

40歳男性も2005年に搬送先の病院で心室細動を起こし、除細動器を植え込みました。しかし、ペースメーカーの植え込みは見送り、内服薬の投与などでしのぐことになりました。


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除細動機能付き両心室ペースメーカー

2006年、主治医で東京女子医科大講師の松田直樹さんから、除細動機能が付いた両心室ペースメーカーを植え込む臨床試験に参加するよう勧められました。松田さんは「ペースメーカーと除細動器の二つを植え込むと、体に負担になり、機械の誤作動の危険もあります。一つで二つの機能が果たせる方が望ましい」と話します。

Aさんが植え込んだペースメーカーは、重さ約70グラムです。手のひらに乗るぐらいの大きさです。鎖骨のあたりに植え込み、静脈から心臓に入れた3本のリード線は、右心房、右心室、左心室に入れられます。

ペースメーカーには、マイクロコンピューターや電池が組み込まれており、右心房のリード線が電気信号をキャッチすると、左右の心室に入れたリード線が、心臓が発する信号よりも先にペースメーカーからの信号を伝え、心臓を収縮させます。

心室細動が起きた時は、リード線が異常を感知し、ペースメーカーから強いエネルギーの電気を流してショックを与えて、震えを止めます。

保険が適用された除細動機能付き両心室ペースメーカー

ペースメーカーの電池の寿命は、作動具合によっても異なりますが、平均5年程度です。胸の上から特殊な装置を当てて、電池残量をチェックできます。充電はできないため、電池残量が少なくなると、ペースメーカーを取り換えます。

除細動機能付き両心室ペースメーカーは2006年夏、保険が適用されました。手術は、厚生労働省が定める一定の基準を満たす全国約270施設で受けられます。詳しくは、医療機器メーカーで作る「日本不整脈デバイス工業会」のホームページ内で確認できます。


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東京女子医大病院

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