-腎動脈狭窄症のステント治療 -


腎動脈狭窄症のステント治療

腎不全になる腎動脈狭窄症

腎動脈は大動脈から分かれて、左右の腎臓につながる直径6ミリほどの血管です。腎動脈狭窄症は、血管が硬くなったりもろくなったりする動脈硬化が進んだために起きます。

腎臓は血液中の老廃物を除去する臓器です。腎不全になると、週3回程度、血液を浄化する人工透析に通院しなくてはなりません。透析が必要になる原因は、糖尿病性腎症や慢性腎炎が多いいですが、腎動脈狭窄が原因の場合も1%程度あると東京慈恵医大血管外科教授、大木さんは推測します。

腎動脈狭窄症では、腎機能の低下による自覚症状が出る前に、高血圧が表れることを知っておいてください。狭窄で血流が低下すると、腎臓は全身が低血圧状態になっていると判断し、血流を増やそうと、血圧を上昇させるホルモンを分泌するためです。

一般的な高血圧症では、血圧は40歳代から徐々に上がるが、55歳以上で発症した高血圧や、高齢になって突然悪化した場合、腎動脈狭窄が原因の可能性があります。

腎動脈の狭窄は、体外から血管の様子を見る超音波検査で診断できます。


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大木さんは、検査対象として、以下の5つの症状をあげています。

1.高血圧が55歳以上で発症、あるいは悪化した

2.2剤以上の薬を使っても血圧が下がらない

3.腎臓の大きさが左右で大きく違う

4.原因不明の腎機能障害

5.心臓の冠状動脈や足の血管に狭窄がある

体への負担が軽い腎動脈ステント治療

66歳の女性は、高血圧が悪化し、疲労感を強く感じるようになりました。顔がむくみ、腎臓に血液を送る動脈が詰まる「腎動脈狭窄(きょうさく)症」と診断されました。半年後に、左右の腎動脈が2本とも完全に詰まり、腎臓が働かなくなる急性腎不全を起こし、人工透析を始めました。間もなく、腎臓への血液の流れを再開するため、大木さんに、腎動脈にステント(金網の筒)を入れる治療を受けたところ、腎機能が回復しました。血圧も安定して元気に退院し、透析から開放されました。

腎動脈ステント治療は、足の付け根の動脈から、細い管(カテーテル)を入れて、狭くなった部分まで送り込み、風船状の器具で血管を広げたうえ、再び狭くならないよう筒型のステントを血管内に置きます。部分麻酔で可能で、2、3日の入院で済むほど、体への負担が軽い治療法です。

この治療は、米国では年約6万件が行われていますが、日本では従来、高血圧に対する薬物療法が行われていた程度で、ステント治療はまだ年800件ほどです。医師の間でも腎動脈狭窄症の認識が、十分に広がっていないことが背景にあります。

米国で11年間診療して昨年、帰国した大木さんは「この治療で透析をせずに済む人や、血圧が正常化する患者はもっといるはずです。腎動脈の検査は超音波ででき、普及させる必要があります」と訴えます。

しかし、どの程度の狭窄でステント治療を行うべきかについて、米国でも指針はありません。比較的安全な治療ですが、カテーテルで血管内に血の塊ができ、腎機能の一層の低下などを招く危険もあります。大木さんは血圧や腎機能などをみて、「血管が70%以上、狭くなった場合」を目安に治療を検討すると言っています。

関係医療機関

東京慈恵医大血管外科

カレスサッポロ北光記念病院

湘南鎌倉総合病院

岸和田徳洲会病院

小倉記念病院

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